8年前の旅行の旅程を、記憶ではなく写真から復元しました。
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このブログでは2015年から2019年の古い旅行記も書いています。困ったのは、細かい日程をまったく覚えていないことでした。
それを解決したのが、写真そのものに入っている情報です。
写真には、自分が入力していない情報が記録されている
スマートフォンやカメラで撮った写真には、画像とは別に、撮影時の情報が自動で埋め込まれています。これを EXIF(イグジフ) と呼びます。
上は実際に私がタイで撮った写真から取り出したものです。撮った本人は何も入力していませんが、これだけの情報が残っています。
とくに大きいのが位置情報です。緯度と経度が、小数点以下4桁まで記録されています。これは10メートル程度の精度にあたります。
175枚の写真から、7日間の旅程が出てきた
2018年のタイ旅行を例にします。手元に残っていたのは175枚の写真でした。
調べてみると、175枚すべてに撮影日時があり、172枚に位置情報が入っていました。
やったことは単純です。
- 全部の写真から「撮影日時」と「緯度経度」を取り出す
- 日付ごとにまとめる
- その日の最初の1枚と最後の1枚の座標を見る
結果がこれです。
写真の位置情報だけを並べたもの。地図は使っていません
点をつないだだけで、バンコク圏 → クラビ → サムイ島 → タオ島 → サムイ島 → バンコク圏という移動が出てきました。
日付ごとに見ると、さらにはっきりします。
| 日付 | 最初の写真 | 最後の写真 | その日の移動 |
|---|---|---|---|
| 9/5 | 02:23 バンコク圏 | 20:25 クラビ | 683km |
| 9/6 | 10:11 クラビ | 22:49 サムイ島 | 203km |
| 9/7 | 08:08 サムイ島 | 21:11 タオ島 | 56km |
| 9/8 | 08:27 タオ島 | 23:11 サムイ島 | 65km |
| 9/9 | 07:58 サムイ島 | 22:08 バンコク圏 | 475km |
| 9/10 | 10:47 バンコク | 15:34 バンコク | 5km |
読み取れることがいくつもあります。
9月5日の最初の1枚は、深夜2時23分でした。場所はバンコクの中心から北へ20kmほど。乗り継ぎの待ち時間だったのだろうと分かります。そこから同じ日の夜にはクラビにいて、683km動いています。
最終日は5kmしか動いていません。 市内をすこし歩いただけの日だったということです。
毎日の最後の写真が22時や23時なのも分かります。夜まで出歩いていた旅でした。

ちなみに、上の表で「9/7 21:11 タオ島」と出ている日に撮ったのがこの景色でした。座標から場所を引いて初めて、これがナンユアン島だと分かりました。
こうして組み立てた旅程は、タイ7日間の島めぐりにそのまま使っています。
分かったコツと限界
「その日の平均」を出してはいけない
最初にやりがちな失敗です。1日ぶんの座標を平均すると、移動日は海の上に出ます。
サムイ島とタオ島を船で移動した日の平均は、どちらの島でもない海面を指しました。最初と最後を別々に見るのが正解です。
位置情報が入らないカメラもある
同じ旅行でも、機種によってまったく違いました。2019年のドイツ・イタリア旅行の内訳です。
| 機種 | 位置情報あり |
|---|---|
| iPhone 7 | 210枚中 210枚 |
| FinePix XP130 | 12枚中 0枚 |
コンパクトデジカメにはGPSを積んでいない機種が珍しくありません。一方で、最近のカメラはスマートフォンと連携して位置情報を記録できるものもあり、私が使っているOM-3は全枚数に位置情報が入っていました。
機種による、というのが結論です。
時刻には落とし穴がある
ここが一番はまりました。
EXIFの「撮影日時」には、タイムゾーンが書かれていません。 2018:09:07 21:11:44 のような文字列があるだけで、それがどこの時刻なのかは、それ自体からは分かりません。
GPSの時刻から時差を逆算できる
救いになるのが位置情報です。GPSの時刻はUTC(協定世界時)で記録されます。 先ほどのタイの写真を見比べると、こうなっていました。
| 項目 | 値 |
|---|---|
| 撮影日時 | 2018-09-07 21:11:44 |
| GPSの時刻(UTC) | 2018-09-07 14:11:38 |
差はちょうど7時間。タイはUTC+7なので、カメラの時計は現地時間に合っていたと分かります。この写真にはタイムゾーンを示すタグがありませんでしたが、GPSとの差で確認できました。
実際にずれていた例
新しめの機材には、時差そのものを記録する項目があります。私のOM-3にはそれが入っていて、アイスランド旅行の写真はこうなっていました。
| 項目 | 値 |
|---|---|
| 撮影日時 | 2026-01-01 21:32:52 |
| 記録されていた時差 | +09:00(日本時間) |
アイスランドはUTC+0です。 つまりこの写真、ファイル上は21時32分ですが、現地では12時32分でした。カメラの時計を日本時間のまま使っていたわけです。
これは実害として出ました。オーロラを撮った長時間露光の写真は、ファイル上の時刻では午前3時〜7時に並びます。一見おかしくありませんが、9時間戻すと現地の18時〜22時。オーロラを見に出かける時間帯そのもので、こちらが実態でした。
同じ旅行で使った別のカメラも、ほぼ同じ時刻を指していました。日ごとのフォルダの区切りと突き合わせると、2台とも日本時間のままだったと確認できます。
実務上どうするか
私の結論はこうです。
- 旅程の「順番」を出すだけなら、ずれていても困りません。 全体が同じだけずれるので、前後関係は保たれます
- 「朝だったか夜だったか」を語るなら、必ず確認します。 9時間ずれると昼と夜が入れ替わります
- 複数の機材を併用するなら、出発前に時刻を合わせておくのが一番確実です。スマートフォンは現地時間に自動で合いますが、カメラは手動のことが多く、そこで食い違います
裏返し:これは他人にも読める
ここまでは便利な話でした。ここからが本題かもしれません。
同じ情報は、写真を受け取った誰にでも読めます。
位置情報は旅行先だけに付くものではありません。自宅で撮った写真には、自宅の座標が10m精度で入ります。 部屋で撮った持ち物の写真をそのままSNSに上げれば、住んでいる場所を渡すことになりかねません。
⚠️ 大手のSNSは投稿時に位置情報を削除する仕様のものが多いですが、すべてがそうとは限りません。ブログやフリマアプリ、メールでの直接送信は、そのまま残ることがあります。
このブログでやっていること
公開する写真からは、例外なくEXIFを削除しています。
このブログには旅行やガジェットの写真を数百枚載せていますが、位置情報が残っているものは1枚もありません。記事を作るときに、必ず削除する処理を通しています。
実際、先日ルーターの写真を扱ったときも、iPhoneで撮った写真に自宅の座標が入っていました。そのまま公開していたら、自宅の位置を晒すところでした。
自分で確認する方法
難しい操作は要りません。
- iPhone / iPad — 写真アプリで画像を開き、上にスワイプすると撮影地の地図が出ます。地図が出れば位置情報が入っています
- Mac — 写真を選んで「情報を見る」。または画像を開いてツールバーの「情報」から確認できます
- Windows — ファイルを右クリック →「プロパティ」→「詳細」タブ。ここで削除もできます
Windowsのプロパティ画面には「プロパティや個人情報を削除」という項目があり、位置情報だけを消すこともできます。
まとめ
- 写真には撮影日時・カメラ・位置情報が自動で記録されている(EXIF)
- タイ旅行の175枚中172枚に位置情報があり、7日間の旅程がそのまま復元できた
- 日ごとの最初と最後を見るのがコツ。平均を取ると移動日が海の上に出る
- 位置情報が入るかは機種による。GPSを積まないカメラもある
- 撮影日時にタイムゾーンは書かれていない。GPSの時刻(UTC)との差で逆算できる
- 実際、アイスランドではカメラを日本時間のまま使っていた(現地とは9時間ずれ)
- 裏返しとして、自宅の座標も同じ精度で記録される
- このブログでは、公開する写真から必ずEXIFを削除している
古い旅行の記憶が曖昧でも、写真が残っていれば旅程は復元できます。 同時に、その写真を人に渡すときは中身を確認したほうがいい、という話でもあります。
なお、この記事で時差の検証に使ったカメラはOM SYSTEM OM-3です。撮影データまわりの話はOM-3のレビューにもまとめています。
このブログの写真の扱いについては、運営の記録にも書いています。